不動産の転売を効率的に運用するためには、土地売買のための資金繰りが非常に重要になります。そこでこのページでは不動産転売の実態と、売買資金について融資元を比較・調査します。
不動産転売業とは
不動産転売業とは、不動産を購入し、売却した後の差額で利益を得る業種のことです。
隣接する複数の土地を購入し大きな土地として評価を上げたり、築古の建物を更地にする、駅近で完売する人気のマンションを購入し数年後に売却する、などして建物や土地の価値を高め、購入した金額よりも高い値段で売り渡します。
プロの不動産業者だけができる士業と思われがちですが、個人でも土地売買はもちろん可能です。
それではこうした不動産の転売は、一般的な不動産業(不動産建物取引業)とはどの点が異なるのでしょうか?
一般的な不動産業との違い
一般的な不動産業は、建物や土地を"仲介"という形で次の購入者へ売却することで得られる仲介手数料で収益を得ています。
一方で不動産転売業は、建物や土地そのものを購入し、"何らかの付加価値を付けて売却する"ことで、利益を獲得するものです。
一般的な不動産取引業建物や土地を売りたい人と買いたい人を繋ぐ=仲介し、それに関わる手続きを代行することで手数料を得る不動産転売業建物や土地そのものを購入し、付加価値を付けて次の購入者へ売却する
不動産転売業は違法?
こうした行為は「土地転がし」とも言われ、良い印象をお持ちでない方も少なく有りません。
しかし、土地の"本来の価値"を引き出し、それに"投資"し、改めて評価を得ることで利益を得る、戦略的な仕事だとも言えます。
大手デベロッパーの地域再開発=不動産転売業社
そんな戦略的なビジネスを大掛かりな資本で行っているのが、大手不動産デベロッパーではないでしょうか。
大手企業・デベロッパー・不動産業者は、"再開発"という名目で建物や周辺の土地の買収を行い、ビルやマンション・商業施設を建設するといった形でビジネスを展開しています。
つまりこれは不動産の転売そのものに全く違法性がないことを証明しているといえます。
主な大手デベロッパー
三井不動産
三菱地所
住友不動産
東急不動産
野村不動産
不動産転売は免許が要らない?
大手デベロッパーとまでは行かないにしても、法人で不動産転売業を行なっているケースは多く存在します。また先述のとおり、個人でも不動産転売自体は行うことは可能です。
そのため手頃な物件を自己資金で購入し、購入価格より高い価格で売却するという行為そのものは、個人でも資格や免許なしに普通に行うことができます。
買った土地をすぐに売るからといって、ただちに免許が必要なわけではありません。
短期所有には重い税金がかかる
土地の転売で気をつける必要があるのが、ズバリ「税金」です。
一般的な物の売買とは異なり、”所得税” と “住民税” がかかります。
土地の所有期間所得税住民税合計税率所有期間5年以下30.63%9%39.63%所有期間5年以上15.315%5%20.513%
※2037年度までは別途、復興特別所得税(×2.1%)が課税されます。
短期間の所有では40%近い税金がかかることに十分、注意してください。
継続的に行う場合は免許取得を
しかし継続的に「業」として不動産の売買・仲介・区画分けを行なっていく際には、宅地建物取引業免許(宅建業免許)が必要になります。
どれほどの回数や頻度が「業」と見做されるかについては、様々な解釈がありますが、後述の区画分けを行わない限りは「数ヶ月に1度」であれば、反復継続にあたらないと言われています。
ただし「区画分け」=一つの土地を複数に分けて売却する行為、を行なって売却した場合には、直ちに「反復継続」とみなされるので注意しましょう。
また、頻度が少ないからといっても、数年に渡り継続的に行なっている場合は、反復継続とみなされる可能性があります。(参照:国土交通省宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)
宅建業の資格を持たず、無免許営業で検挙された場合には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または両者の併科)が科せられます(宅地建物取引業法第79条第2号)。
運用資金の獲得が課題
しかしメルカリと同じ"転売"でも、対象が不動産となると、その資金繰りは非常に重要になってきます。
数千万円単位のお金を動かす訳ですから、少しでも多くの資金でより良い物件を購入し、売却する必要があります。
また、購入した不動産は、すぐに売却できるものもあれば、一定の期間保有することで価値が高まるケースや、建物を解体し更地にする必要があれば追加の資金が必要になるケースなど、手持ちの資金は多いに越したことはないと言えます。
では、どのように運転資金を確保すれば良いでしょうか?
自己資金
自分自身で貯蓄するなどして確保した自己資金、資本金です。不動産転売業を初めた直後から多くの手持ち資金を保有していることはあまりないと思います。そのため、自己資金だけで運用するのは限定的になり、本業として運用するのは非常に困難でしょう。
メリット
自分で貯金したお金なので、自由に使え、利子などは発生しません。
デメリット
貯金額がそもそも少ないと、希望の物件をそもそも購入できないなど、行動が制限されます。
親類からの借入
親・兄弟・親戚などからお金を借りる方法です。親が一定の貯金があったり、親族との人間関係が良好であれば、一定の資金を獲得することができるでしょう。金利なども親族関係でほぼゼロで済むと思います。
メリット
親族が資産家だったり資金的に余裕がある場合は融通が効き、柔軟に資金を確保できます。
デメリット
失敗した場合に親族との人間関係が悪化したり、利益が出た場合の分配などで揉める可能性があります。
銀行からの融資
一般的な企業であれば、銀行からの融資を受けて新たな事業に投資します。健全な財務状態と、達成可能な事業計画を提出できる能力があれば、一定の融資を得ることができるでしょう。しかし、不動産転売業は融資を受けづらい傾向があり、特に起業して数年間は不安定な売上・収益から実績も少ない状態では、融資を得ることは難しくなってきます。
メリット
融資と返済を繰り返し実績を作ることで、より多くの資金融資を引き出せる可能性があります。また金融機関の取引先で協業できる企業の紹介を受けたり、金融機関のネットワークも活用できるかもしれません。
デメリット
実効性の高い経営計画・健全な経営状態など、融資が回収できる見込みや連帯保証人が求められるなど、厳格な基準により融資を受けるハードルは高めでしょう。
自治体の支援
こちらも一般的な起業であれば、国や地方自治体から様々な助成金などの支援を受けることができますが、不動産転売業という業態では助成金が該当するものが少なく、また数千万円単位の支援を助成金で受けることはほぼありません。
メリット
一般的な金融機関と比較して非常に低い金利であり、返済期間も融資直後は猶予があり長期返済が可能など、非常に条件が恵まれています。また企業直後でも事業計画や社会貢献性が高いと判断されれば比較的高額な融資を受けることも可能です。
デメリット
不動産業、特に転売など短期間で収益を上げるような一般的に社会的に貢献度が低いと判断されるビジネスモデルでは融資を受けることが難しい傾向にあります。また比較的少額(300~800万円)程度の融資が多く、不動産転売に必要な数千万円単位での融資を最初から受けることは極めて難しいでしょう。
ノンバンク
不動産転売業に最も相性の良い融資元は、ずばりノンバンクでしょう。
ノンバンクの不動産担保ローンを活用することで、「所有している不動産を担保に手持ちの現金を確保」することができるのです。
また、不動産の評価額に見合った融資を受けることができるので、資金を借りやすく、物件がしっかりしていれば数千万円単位で融資を受けることができます。
メリット
自分の商品そのものを担保に資金の融資を受けることができるので、リスクが低く抑えられます。 また不動産担保ローン以外のノンバンクと比較すると金利も低い傾向にあります。
デメリット
転売後の金額が想定よりも下回った場合、担保となった土地を手放す必要があります。
不動産転売は悪か
近年、「メルカリ」などのフリマアプリの浸透により、"転売" という行為の認知度が上がりました。一部でプレミア商品を買い占め、ネット上や中古品買取業者へ売ることで差益を得ており、いわゆる「テンバイヤー」として社会問題になっています。
しかし元々の「転売」は、"経験と知識で埋もれている商品を発掘"し、"良さを知る人に仲介販売する" 、「目利き」と「行動力」を生かした生業でした。
土地・建物の場合には、こうした元々の転売の趣旨が仕事・業務として行われており、決して社会的に悪い行為であるとはいえないでしょう。
不動産転売の例)
跡継ぎのいない賃貸アパートや不動産物件などを買い取り、優れた賃貸業社へ売却する
建物を解体・更地にして売却する
更地を区画分けしたり、統合することで土地の価値を高めて売却する
いずれも地域の新陳代謝を促し、新しいビジネスに繋げることができるお手伝いをしているとも言えるのではないでしょうか。
不動産担保ローン活用事例
事例1)大阪府堺市
大阪府堺市の不動産転売業S社は、創業3年目の立ち上がったばかりの企業。
地元の古いアパートに目をつけ、更地にすることで利益が得られると判断しました。 しかし既に購入済みの不動産があり、手元に十分な資金がありません。
そこで手持ちの住宅の不動産3件を担保に、不動産担保ローンで2,100万円の融資を受けることができました。 この資金を元にアパートを購入し、入居者の退去・建物の解体を行い、更地にして売却できることに。 返済は売却で得た利益から行いました。
事例2)京都府木津川市
京都府木津川市の不動産転売業N社は、更地を不動産デベロッパーに売却することで収益を得ている5年目の企業です。
今回奈良の古家の物件を紹介で案内されたのが、住宅8区画分に分割してデベロッパーに売却できる好条件の土地。 しかし建物の解体だけでなく造成も必要ということで、急遽追加の費用が発生することに。
そこで手持ちの不動産5つを担保に1,500万円の融資を受け、造成も済ませ、土地を売却。 返済は売却から得た利益から支払い、無事取引を終えることができました。
事例3)大阪府門真市
大阪府門真市のB社は、賃貸住宅物件を家賃収入の目的で購入。
しかし駅から近いものの建物が古いなどの理由で入居率は半数で推移し、十分な収益が見込めない状況に。
そこで物件を取り壊し、更地にして売却することを検討。
現在の土地を不動産担保ローンで8,500万円の融資を受け、更地にし、売却した土地の代金で土地の費用と更地の造成費用を支払うことに。
幸い、駅から近く、古い地主が多い土地柄で新たな土地が出にくいことから高額で売却することができた。
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